六千万円足りません

加入している生命保険のご契約内容説明活動なるものがやってきたので、これを機会に保険を見直すことにしてみました。

といっても、加入している生命保険会社がやってくれるわけではありません。彼らは、今の契約内容から下げることなど考えるはずもないのですから。ここは、いちおう厚労省年金局出身で、ファイナンシャルプランナーの資格も持っている自分でやってみるとしましょう。

設定は、現在30歳の男性(民間2年半、役所3年)が、31歳からとある役所に勤め、同い年の女性と結婚して35歳で子供が二人でき40歳(子供5歳)で死亡してしまったとして、必要保障額を考えてみましょう。妻は、専業主婦とします。

まずは、死後必要となる金額です。

クレジットカード等返済      10万円
葬儀費用            250万円(全国平均230万程度⇒
子供が大学を出るまでの生活費 5,100万円(月25万×12×17年 妻一人子二人なら月25万程度⇒
教育費            3,160万円(1,580万×2人)小学校公立、中高私立、大学私立文系自宅の場合⇒
子供が独立後の生活費     5,520万円(月20万×12×23年 妻が57歳から80歳まで生きると仮定)
合計で、1億4,040万円です。なかなか前途多難ですね。では、資産と収入はどうでしょうか。

まずは、年金。ここは複雑なので詳細に見てみましょう。日本の公的年金制度は、大雑把に言って二階建ての構造になっています⇒。男性は公務員なので共済制度に加入しており、死亡すると遺族共済年金(民間時代の厚生年金からの遺族厚生年金を含む)が出ます。これは妻の死亡時まで出ます。
そして、子供が18歳(妻53歳)の年までは、一階部分の国民年金から遺族基礎年金が出、子供が18歳を越えると遺族基礎年金はもらえなくなりますが、替わりに中高齢寡婦加算というものが共済から出ます。そして妻が65歳になると、自分の老齢基礎年金がもらえるようになります。⇒

つまり、妻40歳から53歳は遺族共済年金と遺族基礎年金、妻53歳から65歳までは遺族共済年金と中高齢寡婦加算、妻65歳からは遺族共済年金と老齢基礎年金です。

では、それぞれの金額はどれくらいでしょうか。

まず、二階部分を計算してみましょう。ここは、基本的に現役時代の収入と加入期間で決まります。ちょっと分かりにくいですが、⇒の遺族共済年金のページを見てください。

厚生年金相当部分が、

平均給与月額×5.481/1,000×加入期間(月数)

と書いてあります。

そして、職域年金部分が、

平均給与月額×1.096/1,000×加入期間(月数)

と書いてあります。ここで職域年金部分というのは、民間の企業年金に相当する共済の三階部分のことです。先ほどの年金制度の体系図を見てください。

要するに、民間サラリーマン時代の分は、平均給与月額×5.481/1,000×加入期間で、公務員時代の分は、平均給与月額×6.577/1,000×加入期間なのです。

で、この平均給与月額というのは、ボーナス込みで額面の年収を月額に直したものと考えてください。よって、毎月の額面よりは多くなります。

仮に、この男性の民間時代の平均給与月額が40万だったとします(計算過程は省きます)。過去の役所勤務時代は、25万だったとしましょう。公務員の初任給は181,200円なので、だいたいそんなもんです(おおむね、額面の月給を1.4倍弱くらいにすると平均給与月額になります⇒)。では31歳から40歳までの間はどうかというと、男性は職歴があるので、おそらく5年目相当くらいの給与からスタートし、15年目相当くらいの給与になっていると考えられます。先ほどの都職員の給与の状況から類推すると、5年目は額面25万くらいでしょうから、15年目が34万と書かれていることから考えて、平均して額面29.5万で働いたとしてよいでしょう。すると、平均給与月額はだいたい40万くらいになります。したがって、役人時代は、25万で36か月と40万で108か月の加重平均で、おおむね36万で働いていたとしてよいでしょう。

ここまできて、ようやく計算ができます。

民間時代分 40万×5.481/1,000×30=65,800円(年額 50円以上の端数切上げ)
役人時代分 36万×6.577/1,000×144=341,000円(年額)
合計    40.68万円(年額)

次に、一階部分も合わせて計算してみましょう。

まず、妻53歳までは、遺族基礎年金が出ます。これは、定額です。⇒ここでは子供二人ですから、792,100+227,900×2=1,247,900円(年額)です。

次に、妻53歳から65歳まで、ここは、中高齢寡婦加算ですから定額の594,200円(年額)。

そして、妻65歳からは、国民年金保険料を全期間納めていたとすると、満額の792,100円(年額)出ます。

したがって、妻53歳までは年額165万4,700円(月額約13.8万円)、妻65歳までは年額100万1,000円(月額約8.3万円)、妻65歳以降は年額119万8,000円(月額約10万円)の年金収入があります。

これらを合計すると、妻が80歳まで生きるとして、5,149万3,100円の年金収入があります。加えて、男性には現在約500万円の貯金があり、毎月5万円ずつ貯めていったとすると、結婚費用で300から400万円程度吹っ飛んだとして、40歳までにはだいたい700万円になっています。プラス、妻が男性死亡後に月10万円ほどパートで働き、子供が大学を出るまで続けたとすると、2,040万円(10万×12×17年)の収入になります。

総計で、妻が80歳で死亡するまでの家族の収入と資産は、7,889万3,100円です。

これを、先ほどの必要額と差し引くと、必要保障額が出ます。結果は、6,150万6,900円。

なんとなんと、おおよそ六千万円足りません。これを死亡保険金で賄うようにしておかないといけません。現実問題、母子家庭の場合は、学校は公立で我慢してもらうんでしょうし(そうすると、子供一人当たり500万は違う)、奨学金を取ってもらったりするんでしょう。そんなこんなで、一般的には子供二人の四人家族の世帯主の場合、必要保障額はおよそ5,000万円だと言われています。

ちなみに私の死亡保険金額は、1,500万円で保険料が月額7,800円くらい。

ところが、独身の場合、はっきり言って葬儀費用くらいしか要りません。何も知らない新入社員時代に、生保レディに丸め込まれました。そんなこんなも含め、簡単に必要な保障を見積もれるのはここ⇒日本生命の方が始めたネット生保で、業界が消費者をだまくらかしてた手口を全部オープンにして極力純粋な形の保険を売っているその筋では有名なところです。

私もここに乗り換えるつもり。だいたい月額3,000円くらい安くなりますね。

図書館ライフその後

先月末で退職したので、春まで自由人です。

旅行だ何だと一時浮かれましたが、退職した翌日から東大駒場の図書館に一日中こもって受験勉強しています。これが人生最後のまとまった自由時間ですし、勝負をしておかないと後悔する。旅はリタイアしてからいくらでもすればいいし、若いうちは将来投資に命をかけないと、「やっとけば俺の人生変わったのかな」では取り返しがつかない。

というわけで、今年30のおじさんは18、19の平成チルドレンに囲まれながら、いつになく真面目に勉強しているのでした。

それにしても、何で留年も含め五年間も自由時間があったのに、ろくに勉強しなかったんだろう。今あの時間があれば、何にでも合格する自信あるぞ。

少年易老学難成
一寸光陰不可軽
未覚池塘春草夢
階前梧葉已秋声